あっという間に最終日やっぱり4日は短い。
今日も朝から練習。いつも以上に熱が入る。
今度はいつ来れるかわからないので、
4日間で覚えた二曲を自分たちだけでも叩けるように
しっかり覚えておかないといけない。
コマンさんも朝から一日付き合ってくれる。
あっという間にお昼も過ぎ、
ガムランに狂ってしまったかのように叩きつづける。
今日はコマンさんの家の近くの小さい寺院でお祭りがあり、
コマンさんの村のガムラン隊が演奏するそうなので、
(もちろんコマンさんも)それを見に行くことにしていた。
その時間まで練習させてもらう。
脳は疲れ果て、集中力もなくなってきたのに、
腕だけは不思議と疲れない…
午後六時
まだまだ教えてもらいところはたくさんあって、
練習を続けたいところだが、お寺に行く時間も近づいてきたので、
その準備に取り掛かる。
準備といっても本当ならお祭りには正装で出かけなければいけない
ものの、私たちはバリに持ってきていなかったので、
とりあえずサロンとスレンダン(腰に巻くベルトのようなもの)
を腰に巻き、今回はそれで許してもらう。
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サロンとスレンダンを身につける。 |
コマンさんも正装に着替えて準備をしていた。
お祭りは夜中まで続くそうなので、コマンさんと
話せるのもこれが最後。
私たちはまだ4日分のレッスン料を渡していなかった。
コマンさんは自分からいくらですとはいってくれないので、
(バリでは料金を言ってくれないことがよくあるらしい)
こちらで勝手に決めて支払う。
これも結構困ったもので、相場がわからないので、
一応一日四時間、一時間で2万ルピアの計算で払うことにしていた。
私たちの場合、一日四時間とか言いながら
何時間もオーバーしてやってもらっているので、
このレッスン料は絶対安すぎるはず。
コマンさんには本当に感謝している。
今日お祭りがあるお寺はコマンさんの家から
歩いて5分ぐらいのところにある。
こじんまりとしたお寺の外では正装に身を包んだ
男ばかりのひとだかりができていて、
なんだろうと強引に割ってはいっていくと、皆、賭け事に熱中していた。
男の子もこの日は特別なのか、母親にお小遣いをねだりながら、
大人に混じって賭けをしている。
お寺の中に入ると、大きな傘のようなものや
お供え物を持った人たちが、輪になってぐるぐるまわっている。
その横ではガムランが演奏されている。
B・G・Mといったところか。まだコマンさんの村のガムラン隊ではない。
その後ろの方で、女の人たちが井戸端会議。
来ている人数はとても多く、小さい寺院が人でいっぱいになった。
私たちもあいてるところに座る。
がなんとなく女と男の座る場所が右と左で別れている。
輪になって回るのが終わると、その場所にござがひかれ、
ござの上で正座し、個人個人お祈りを始める。
一人一人洗礼を受け聖水を飲み、米粒をもらい
それをおでこにくっつけていた。
こちらもなんとなく神聖な気分になる。
と、若い女の子たちが参拝者全員に、お菓子と甘いお茶をくれる。
何の関係もない私たちもおこぼれをもらう。
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お祭りでやっていた賭け事 |
子供 |
ようやくガムラン隊が入れ替わりコマンさんの出番が来た。
私たちもガムランのすぐそばに移動し、というか
移動させられる。
それから私たちが帰るまでガムランは
止まることなく鳴り続けていた。
寺院の中には祭壇とやぐらのようなものが建てられていて、
しばらくすると、そのやぐらの上に何人もの僧が座り込み、
神にお祈りをささげ始めた。
ガムランのほうは、皆、普段は普通の仕事をしているため、
なかなか合同練習ができないらしく、そのためかよく間違う。
中には横の人のをちらちらみたり、教えてもらいながら叩いたりと、
いつもウブドで観るようなしっかりした公演とは
一味もふた味も違っていた。
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コマンさんたちのガムラン演奏の様子。 |
とてもテンポの速い曲のときに、
どんな曲でもいつも涼しげな顔でたたいているあの
バリ人が、すごい必死な顔で全身汗だくになって早く終わって
という顔をしながら叩いているのを観たときは、
バリ人でも速すぎて、つらいときがあるんだと知って、
妙に安心してしまった。
この曲をやり終えた後、
もう全部の力を出し切った!といった感じで、
みんなが苦笑いをしているのが、私にはとても面白かった。
ふと上にいる僧たちのほうに目をやると、
小刻みに肩を震わせ、奇声を発している僧がいて驚いた。
僧に神様が降りてきたのか…
これがうわさの『トランス』というものか。
はじめてみる異様な光景に一瞬目を疑った。
が、神の国バリではこれがあたりまえのことなのだろう。
人々のお祈りと、お供え物、そして神にささげるガムラン
すべてのものがそろう時、
こうして神様が僧の体を借りて、地上に降り立つのだろう。
最初は奇妙に見えたものもだんだんと神聖なものに思えてくる。
今日はいい物をいっぱい見せてもらった。
夜も遅くなるため、きりのいいところでおいとまする。
時間が許すなら最後まで見ていたかった。
このお祭りはいつまで続くのだろう…
コマンさんに目で合図して寺院を後にする。
家では奥さんの『カデさん』がまっていてくれて、
私たちを見送ってくれた。
暗くなった道をウブド目指してとばしていく。
寒いせいもあったのか、心もなんとなく寂しかった。
たった4日間の修行だったけれど学んだものは数多い。
普段なかなか目にすることがないものも見れたし、
もちろんガムランだって。
上達したかはさておき、ますますやる気が起こった。
今度はいつこれるのだろう。
「前よりも下手になったね」って言われないように
頑張って練習しておこう。
明日からは心機一転仕入れの旅が始まる。
いろいろと考えながら、知らない間に眠ってしまっていた。
頭の中にはもちろんガムランが流れていた。はず…。
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お祭りでのお祈り(スンバヤン)風景 |
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